〜バリバリ伝説とGSX-R〜


〜バリバリ伝説 第8巻 前半〜

少年マガジン昭和59年第32号より昭和59年第36号まで

学校の休み時間にイメージトレーニングをしている比呂
グンに、今週末に鈴鹿のレースに出ることを聞かされ、驚き、自分はいいから3人ででればと弱気になる…
みいでさえも予選を通るかどうかわからないが危ないと自信はもっていないが、夏の耐久4時間に出場するには、この全日本のレースにエントリーしなければならない。
6月のスズカ200kmでは、中間テストにぶつかるため、元先生の市川が許さないのだと……

ライセンス取りたてのレースで不安を隠せないみいと比呂だが、
  レースって聞いだけで、うれしくてゾクゾクしてくるぜ
  ただ走るだけの練習なんて性にあわねーや
と強気なグン、みいは練習走行中でもバトルをしまくっているじゃないと呆れていた…



  もともとは4時間耐久への出場資格をとるためのレースエントリーだから結果は期待してはいない。
  しかし、レースはレース。出るからには全力をつくす。

いよいよ、予選の朝、気合が入る。市川と太田
  グンは実践で実力を出すタイプだがら決勝へ出たら意外にいいところにいくかも…

寝ぼけた状態でも、だんだんと期待はたかまっていく
しかし、トランスポーターのカギがかかっていないことを見つける太田。
異常はなさそうなので、さほど気にせず、とうとう予選開始となる。



はりきってピット前に集まる4人。
大人気のカテゴリーのため、予選は5組に分けられ、1組10分しか走れない。
3周すれば、時間切れ、タイムアタックできるのは2周だけ
  すべてはその2周で決まる!!
市川のゲキに応え出て行く4人!!

しかし、4人に・……



秀吉のいるA組がスタート。
  どないなっとんのや…アクセルを開けてもエンジンの回転がついてこない……
  パワーがいつもの半分も出とらん感じや……
  これじゃタイムアタックどころか、後から来るマシンに追突されそうだ

  なさけない……どうにもならんっ!!



他のマシンはスタンド前を通過しタイムアタックに入っているのに、いつまでも姿を見せない、秀吉を心配するピット
そこに秀吉のマシンが帰って来た。
  マシンがさっぱり走らん こんなんでチンタラ走ってたらあぶなくてしょうがないわ
  さっぱり回らんわ…… ガス欠かと思ったほどや…

  一台一台、この手で完全にチェックしてトレーラーに積み込んだはず……
  いったい どこが……

まったく原因が分からないまま、予選B組の走行が始まる



B組には、みゆきと、比呂が。。。しかし、その二人のマシンも、秀吉とまったく同じ症状で、まったくパワーがでない

「ドノーマルのGSX-Rのほうが何倍もはやいで」
「だいたいあんないいかげんなセッティングででてくるなんざレースをおちょくってるのとちゃうか」
「ばっきゃろー!!帰れ帰れっ!!」
観客の罵声が飛ぶ中、2台のマシンが帰ってきた。

  市川さん!!どういうこと!?マシンおかしいよ
  わたしイヤよ…こんなのってイヤ…
  走りたいのよ!!ベストなコンディションで走りたいのよっ!!

気丈なみゆきも興奮して涙ぐみ、ピットの裏に行ってしまう…



とうとう、グンの組がスタートする。やはりグンのマシンも3人のマシンと同じく、まったくふけない。

  くそっくそっしっかりしろ!!
  目を覚ましてくれイチノセスペシャル!!
  いつものようにスカッと、ふけてみやがれっ!!

グンの願いもむなしく、いつまでたっても、応えてくれないイチノセスペシャルGSX-R
しかし、グンは諦めず、ピットには帰らず、必死にカウルにふせて、少しでも空気抵抗を減らそうとしている

痛々しくてみてられない、衝突される危険もあることも分っているが、グンは諦めず、走りつづける

  ちくしょう…なんでだよ…なんで目を覚ましてくれないだ!!
  イチノセスペシャル!!目をさませよっ!!バカヤロ―――ッ



  くっく…
  くっくっく…

そのグン達の姿をピットの影でみて、にやついている奴が一人・・・

  思い知れ…おれ一人みじめな思いをするのは もうたくさんだ……
  おまえらみんな道づれだ…

去年の筑波で、IRTに負けて以来、ひどいスランプにおちいってしまい、ノイローゼ気味の高根沢であった
タイムが伸びないのを、あいかわらずマシンのせいにしてクルーにも見放されていた…



  なんだってぇ!!
驚きの声がピットをつつむ
グン達4人のマシンがすべて、内側の2,3気筒のプラグキャップが緩められていたというのだ

  おそらくは、外部の人間による…悪質な妨害工作だ…

  せいいっぱい走って それで予選を通過できなくったって こんなにくやしくはないよ
  目の前にやったやつをひきずり出して 思いっきりぶんなぐって半殺しにしてやりたい気分だ…

全員の怒りが頂点に達する…

  許してくれ…後味の悪い思いをさせてしまった…

マシンの管理に手落ちがあったと市川は、全員に謝る。

  しかしだ・…とりあえず 四人とも今日のレースで予選を走ったんだ…
  これで晴れてスズカ四時間耐久レースへの出場資格を得たことになる

全員の悔しさは、まったく冷めることは無い…

  おれ達のイチノセ・スペシャルに小細工しやがった せこいヤロー   忘れるなよ!!
  必ず後悔させてやる!!
  おれ達に こんな思いをさせたことを……夏に後悔させてやる……

  このかりは夏に返す!!
  おれ達は
  このくやしさを 絶対に忘れない!!





季節は流れ、すっかり夏に・・・
スポーツ走行では、グンが2分38秒をマーク。卑怯ないやがらせのために予選落ちしたレースのおかげで全員の結束が深まり、全員が燃えているよう

そんななかでのミーティングで、明後日から最後の調整をかねてスズカへ出発すると今後の予定と、ペアライダーの組み合わせが発表される。
「グンとヒデヨシ!!お嬢さんと比呂のペアだ!!」
市川の発表に、グンは反抗するが、グン以外のものは、秀吉までもが速い奴同士で組むのが当然だと考える。

全員のなかに、この半年のレースばかりだった記憶がよみがえる。

  土曜日の夕方 東京を出発して走る車の中で寝て・・・
  そこまでしてサーキットへ行っても40分も走れればいいほうやもんな・・・
  帰りは帰りで、東京へつくのは日曜日の真夜中   くたくたや
  そういうのがおもしろくてしかたないんや

  帰りの高速で渋滞にまきこまれて・・・
  月曜の朝、学校に遅れたりして・・・
  それ以来、わざわざカバンと制服、車の中にのっけたりしてね・・・
  グンなんて、いつもカバンカラッポなのよ・・・あんまり意味がないわよね

  あんなにがんばったんだもん・・・できることなら予選を通って決勝を走りたい







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